健康経営のメリットは?政策の目的や取り組みもわかりやすく解説

最近企業経営者の中で、「健康経営」という言葉がよく話題に上ります。メリットが高い経営手法といわれても、いま一つ納得できないという人も多いのでは? 今回は健康経営の目的やメリットなどについて、詳しく解説していきます。


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健康経営とは

「健康経営」とは企業が率先的に従業員の健康づくりに取り組み、戦略をもって推進しながら、企業の生産性を高めていく経営手法のこと。雇用している従業員、すなわち「人」を資本として考えるマネジメント法として定着しつつあります。

以前は従業員の健康管理は、個人の責任としてとらえられていました。しかし今や従業員が健康に働ける環境を提供し、便宜を図るのは企業の義務。健康管理は企業の重要な経営課題の一つとして、誠実に向き合っていく必要があります。

こういった考え方の起源は、1990年代のアメリカにあります。その発端は、ある臨床心理学者が主要米国企業200社を調査、分析したこと。心身ともに健康な従業員が多い企業ほど生産性が高く、離職率や医療費負担が低いことを突き止めたことに端を発して、アメリカで一気に健康経営の概念が広がりました。

そもそもアメリカでは公的保険がなかったために医療費が高くなりがちで、健康でいることをとても重要視しています。従業員の健康を維持することこそが、企業の収益性を伸ばすという考え方は世界中に広がって、日本でも2009年頃から大企業をはじめとして本格的な取り組みが始まりました。

もちろん企業が従業員の健康管理を積極的に行うといことは、それなりのコストがかかること。収益を上げて運営する企業にとって、無駄なコストがかかるのは敬遠しがちな面があるかもしれません。しかし健康管理の理念では、費用をかけて従業員の心身の健康をサポートすることは、企業にとっては将来への投資だと位置づけられています。

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健康経営に向けた政府の取り組み

いま企業経営の現場で盛んに取り上げられるのは、「健康経営」は国を挙げて企業に推進している経営手法だからです。

この背景には、少子高齢化が進行していて労働生産性が低いという、日本ならではの事情が影響しています。ただでさえ企業が確保できる従業員が少ないのに、心身の健康を害して欠勤や休職、離職が増えれば、さらに生産性が悪化しかねません。

企業に雇用された従業員は、貴重な人的資産です。企業の業績悪化は国を傾けるリスクがあるため、政府としても従業員の健康管理を企業にとっての重要な経営戦略の一つに位置付け、積極的な取り組みを支援しているわけです。

政府が行っている健康経営の普及・促進支援としては、認定制度があげられます。その代表的なものが、経済産業省が東京証券取引所と共同で行っている、「健康経営銘柄」の選出でしょう。

健康経営銘柄は、経営的な視点から従業員の健康管理や維持に積極的に取り組んでいると認められた企業にしか与えられません。要は優良企業であることを証明する、称号のようなものです。

選出されれば企業名が広く公表されるため、認知度を高めて、取引先や投資家から良い評価を受けるチャンス。従業員を大切にして働きやすい労働環境を提供する、優良企業としてのイメージアップにも繋がります。

そのため健康経営に積極的に取り組む企業が増えていますが、健康経営銘柄の選出と公表の基準は次のとおりです。ハードルが高いため前向きに、真剣に取り組んでいく必要があるといえるでしょう。

 企業の経営理念や方針の中に、健康管理を位置づけているか
 健康経営に取り組むための組織体制が、企業の中に構築されているか
 健康経営に取り組む制度を設けていて、実際に施策が実行されているか
 自ら行った健康経営の取り組みを評価し、業務や施策の改善に取り組んでいるか
 各種関連法令を遵守しているか

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健康経営のメリット

最後に、企業にとっての健康経営に取り組むメリットを解説していきましょう。

国が推奨しているだけで、たいした企業効果はないと考えてはいけません。経済産業省の調査でも、メンタルヘルスの不調を訴える従業員が多い企業ほど利益率の落ち込みが大きいことがわかっていて、健康経営の重要性が裏付けられています。

実施企業からは具体的な成果が上がった旨の報告もされているため、積極的な取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。

 労働生産性の向上

企業が健康経営に取り組むことで得られる一番の恩恵は、労働生産性の向上でしょう。企業に雇用されている従業員は、一人ひとりが業績を支える大黒柱。従業員がいなくては物も作れず、顧客が望むサービスも提供できないため、収益が上がりません。

従業員の心身の健康は、労働生産性の向上に直結する重要な要素。仕事が忙しいあまりに病院に通って治療を受けることができなければ、欠勤や休職などで欠員が生じ、そのぶん生産性が低下します。

目には見えにくい、心の不調も問題です。長時間労働や職場関係のストレスをため込んで体調が悪化すれば、欠員から生産性が減少。穴を埋めようと他の従業員に残業や休日出勤を割り振れば、さらにほかの従業員へと健康被害が広がって、大きな損失を招きかねません。

健康管理は総じて、こういった企業リスクを減らすのに効果的です。企業が努力することで従業員全員の健康を維持できれば、業務効率が向上。社内の雰囲気も良くなり、従業員の仕事に対するモチベーションも上がって、生産性を良好に保つことができるでしょう。

 離職率・定着率の改善

健康経営で従業員の心身の健康を維持することは、従業員の離職率や定着率の改善にも効果的です。なぜなら、健康上の理由を原因とする休職や離職を防ぐことができるから。

また職場環境が改善されれば働きやすくなり、従業員の企業への帰属意識も向上。職場に愛着を感じることで自己都合の離職も防ぐことができ、一石二鳥です。

日本では今後少子高齢化が進み、ますます労働人口が減っていき、慢性的な人手不足が起きることが予想されています。その中で将来的に安定した人材を確保できることは、企業にとっては大きなメリットだといえるでしょう。

 医療費の削減

健康経営に取り組むと従業員が体調を崩して病院に通う回数を減らすことができ、医療費の削減にも貢献します。従業員の医療費は一部企業が負担しているため、企業としても経費のコストカットという恩恵を受けられます。

企業にとっての社会保障の負担は、「見えない人件費」とも言われていて、大きな割合を占めています。これも少子高齢化の影響で、日本では今後ますます医療費が高額化することが懸念されているため、健康経営による医療費の削減は、企業にとって大きなメリットになります。

 就職希望者の増加

健康経営に前向きに取り組むことで、就職希望者を増やすことができることも大きなメリットの一つです。これはなぜかというと、従業員の健康に気を配る、働きやすい優良企業のイメージが定着するから。実際に経済産業省が就活生に行ったアンケート結果では、就活生の多くが従業員の健康や働き方に配慮している企業を選ぶことを希望しています。

ちなみに、健康経営に取り組む優良企業と対をなすのが、従業員の健康に配慮せず、企業都合の労働を強制している「ブラック企業」です。ブラック企業は人員が定着せず、業績が悪化しやすい傾向があります。世間の目はブラック企業に対して非常に厳しく、株価の上昇や投資の呼び込みも見込めません。

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まとめ

健康経営はコストや手間ばかりがかかると思われがちですが、確かなメリットがあることが認められています。

積極的に取り組んで損はありませんが、一朝一夕では効果が表れないもの。長期的な視野に立って、継続的に健康経営に取り組むことをおすすめします。

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